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Canadian English - カナダ英語


解説


アメリカ合衆国と同じ北米大陸に位置しながらも、歴史的経緯からイギリス連邦加盟国であるカナダ(アメリカ独立に際し、イギリス本国への帰属を望んだロイヤリストが移住。その後イギリスの自治領として成立し、1982年のカナダ法の制定により完全独立)。となると、イギリス英語の影響を色濃く受けていると想像しがちだが、アメリカと国境を接している事もあり、総合的に見ればカナダ英語は英米の混合と言える。言い方を変えれば、他の英連邦諸国に比べると、イギリス英語の影響を「然程」色濃くは受けていない。

他の英語圏ではどちらか一方が採用されていることが多いが、カナダ英語の綴りはイギリス式とアメリカ式の混合となる。下記に代表的なものをいくつか紹介しておく。

・-er vs -re
アメリカ式のcenterではなく、centreとなる。

・-or vs -our
同じように「労働」もlaborではなくイギリス式のlabour。※「色」に関してはcolourが一般的だが、ごく稀にcolorも使われている事に留意。

・-yze vs -ize
上記の二点とは異なり、こちらの場合、カナダ英語はアメリカ式を採用している(稀に例外有)。例えば、「分析する」を意味するanalyse(英)はアメリカ式にanalizeとなる。他、-ize-iseに関しても米式の前者が用いられる(例:米式のapologizeとイギリス式のapologise)。

これらの英米加の綴りの差異に関しては、Karen's Linguistics Issues - British, Canadian and American Spellingに詳しくまとめられている。


語彙面に関しては、基本的にはイギリス英語より、国境を接しているアメリカの英語との共通点を見つけるほうが容易であるとされるが、こちらも綴りと同様英米のものが混在している。例えば、カナダ議会は英語では"Parliament of Canada"と称されるが、イギリス式に"parliament"が使われている(米:congress)。一方、上院(the upper house)はアメリカ式に"Senate"の名を冠している。日常生活に目を向けてみれば、車のトランスミッションはカナダではイギリス英語の"gearbox"ではなくアメリカ式に"transmission"と呼ばれ、ゴミ箱もアメリカ英語の"garbage can"となる(英:dustbinrubbish bin等)が、鉄道はアメリカ式の"railroad"ではなく英国式の"railway"の使用が主流(例:Canadian Pacific Railway)。より詳しくはこちらのウェブサイトが明るいので、興味のある方は是非ご覧頂きたい。

現地で生活をした個人的な経験によるものだが、米英の語彙の混在がカナダ英語では多く見られるものの、傾向としては、近年つまりはイギリスとの関係が薄まりアメリカとの繋がりを重視するようになってから新たに生み出されたような日常的に使われる単語に関しては、お隣アメリカと「特に」共通するものが多いように思う。テレビのコマーシャルはイギリス式の(TV) advertではなく、米国式にcommercial (break)と呼ぶことが殆どだし、独立以降に庶民にも普及した車関係の単語もそう(先述のtransmission等)。スラングも同様で、ブリティッシュスラングよりもアメリカンスラングがそのまま使われている事のほうが多い。米加の経済的、文化的(カナダではアメリカのテレビ番組を多数視聴する事が出来る)な繋がりが増す中、このようなアメリカ英語への接近傾向は強まっていくような気もする。

ただ、同じ北米大陸にありながらもあくまでアメリカとは似て非なる国。冒頭でも述べたように異なる歴史を歩むと同時に異なる文化も育んできただけに、カナダ英語独自の単語、スラングも豊富に存在する。下記にリストアップしている単語はその多くがCanadianism溢れるものばかりなので、カナディアンイングリッシュの例としてご覧頂きたい。

また、カナダの公用語は英語だけに非ず。ケベック州というフランス本国に次ぐ巨大なフランス語圏を抱えることもあり、ケベックフランス語(ケベコワ)からの借用語もカナディアンイングリッシュの特徴だろう(例:tuquepoutine)。

哀しきかな、カナダという国自体もそうだが、その癖の弱さ故かいまひとつ影の薄いカナダ英語(とそのスラング)。現地の大学に在籍していたこともあるだけに、個人的には愛着のある単語ばかり。これを機に皆さんもカナダ英語により興味を持ってみては?

動画
How to use the word, eh. - ehの使い方・意味

※他、アメリカ英語も参照されたい。こちらにもカナダで使用されるものが多く含まれている。
※カナダの国民的スポーツ、アイスホッケーに関連するスラングは外部リンクGlossary of ice hockey terms - Wikipedia Englishを参照。

音声的特徴


北米英語というラベルでくくられる事もあるだけに、カナダ英語の発音は、基本的にはアメリカ英語のそれに近しい。英語スラング、方言の語彙を解説するブログなので、詳細には解説しないが、カナダ英語独特のものとして、Canadian Raisingというものがある。これは、二重母音の/aʊ//ai/が、無声阻害音(/p/,/t/,/k/,/s/,/f/)を後に伴う場合、それぞれ、調音点が上がり(raiseされ)/ʌʊ//ʌi/になるというもの。Canadian Raisingのより詳しい解説はそれぞれ下記のサイトを参照のこと。

音声変化の図解:文字通り、調音点がraiseされているのが理解できる。
University of Manitoba - Canadian Raising

音声データを聴きたい
Dr Taylor Roberts - Canadian Raising and other oddities

よくアメリカ人が、カナダ人は"about[əbaut]"を"aboot[əbu:t]"と発音するなどと茶化す事があるが、これもこのCanadian Raisingの延長線上にあるもの。ただ、この法則に従うとカナダ英語では[əbʌut]の発音となり、地域や人によってせいぜい[əbout]と調音点が更に上げられる程度。カナダ人が逆にこれをネタに[アブート]とわざと発音する事もあるけれど…。

Canadian Accents FTW!!!
動画内でカナダ人が単語リストを読み上げているが、"out"や"house"に上述のCanadian Raisingも確認できる。他、アメリカ英語と同じようにfirstcarhamburger/r/が巻き舌で発音されるなどのカナダ英語の特徴が確認できる。皆さんも彼の発話を聴いていて、イギリス英語よりはアメリカ英語にかなり近く感じるのではないだろうか。

更に詳しくカナダ英語の音声を聴きたい方はfonetiks.org - Canadian English Pronunciationを。個々の音素だけでなく、トーン等の特徴も抑えられているのでオススメ。また、Dialects and Accents of Canada|International Dialects of English Archiveも参照されたい。こちらはモノローグ形式でネイティブスピーカーの音声がカナダ国内の地域別にカテゴライズされて多数収録されている。